今回はガラスの話をしたいと思います。ところで建物の採光にガラスが使われ始めたのは、いつごろからだと思いますか。なんと火砕流で埋まったイタリアのポンペイで出土した「広場浴場」の残骸から、当時の建築物の円天井に2つの青銅窓枠(幅230ミリ、長さ540ミリ)の小窓があり、板ガラスの破片が発見されました。
したがって、少なくとも2000年以上前には存在していたということになります。
窓ガラスといえば、福岡県西方沖地震では、市内中心の繁華街のある大きなビルで、444枚もの窓ガラスが地震で割れて、道路一面に数え切れないほどの鋭角の破片となって飛散しました。当時、通行人は少なかったため、奇跡的に数メートルの差で死者が出なかったことは、不幸中の幸いでした。
落下の原因は、窓ガラスの固定方法にありました。
油パテと呼ばれる方法で完全に固まってしまうため、地震時のサッシ枠の変形がもろにガラスに伝わって割れてしまうもので、現在は禁止されています。
現在の窓ガラスは、層間変位追随性といって、建物の変形を吸収する仕組みのシール材で固定されています。
また、1600枚余りあったビルのガラスのうち、網入りガラスは、割れたものの飛散しなかったことは注目に値します。
この窓ガラスですが、前回ご紹介したサッシ同様、時代の変遷の中で多種多様になってきています。
従来は
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・3ミリか5ミリの選択 → ガラス1枚の大きさで選択
・透明か型板(りガラス) → 原則、南側が透明・北側が型板で選択
・網入りガラス → 延焼の恐れがあり、かつ、雨戸なしで選択
の3つだけが大きな選択要素でした。
しかし、最近では、結露や防音対策から、ペアガラスが主流となりつつあり、さらにプラスして、防犯対策の面からの要望が急速に増えています。
そこで、今回は一般的なガラスについての知識を、私なりの考え方も含めて解説していきたいと思います。
1.ガラスおよび開口部付属品の選定
まずは、固い説明になりますが、多機能ガラスの基本的な特色について簡単に説明します。
(1)透明ガラスとすりガラス
透明ガラスは一般名で「フロートガラス」と言い、すりガラスや曇りガラスは「型板ガラス」と言います。
フロートガラスの語源は、つくり方からきており、溶融ガラス素地を、溶融錫(すず)に流し込むと、比重によってガラスが浮かぶことを利用して作るので「浮かぶ(フロート)」に由来しているのです。ですから「FL5」と書かれていたら、厚みが5ミリのフロートガラスということになります。
(2)複層ガラス
一般的に「ペアガラス」と呼ばれているガラスは、実は「複層ガラス」が正式名で、「ペヤガラス」は某ガラスメーカーの商品名なのです。ただ、セロハンテープと同様、「ペアガラス」の方がよく使われています。
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一般的な複層ガラスは、複数枚のガラスに乾燥空気を封入して、断熱性能を高めたガラスです。中間空気層は、6ミリと12ミリが一般的です。
しかし、最近では複層ガラスも進化し、「LOW-Eガラス」が登場しています。
このガラスは、高断熱複層ガラスとも呼ばれていますが、「Low Emissivity」つまり低放射率仕様という意味で、通常のフロートガラスに金属膜をコーティングし、放射率を小さくすることで断熱性を高めた複層ガラスのことです。
実は、この複層ガラスは、寒冷地と温暖地では使い方が異なるのです。
温暖地では、真夏の日射を跳ね返して室内に入れない方がよく、コーティングは外側のガラスに施し、高遮熱高断熱ガラスとして使用します。
一方、寒冷地では、コーティングを内側にし、室内から外に逃げる熱を抑える働きを利用します。
さらに、魔法瓶のような真空ガラスを用いた複層ガラスもあります。
2.防犯対策を考慮したガラス
ガラスに要求される性能で、強度にかかわる項目は、従来は風荷重だけでした。
ガラスは割れるのが当たり前で、石などの固形物が飛んでくる場合は仕方がないという発想でした。
ところが、最近は空き巣が増えただけでなく、その手口が巧妙かつ凶暴で、防犯対策を付したガラスの開発ニーズは急激に高まっています。
防犯ガラスは、ガラスの間に特殊フィルムをサンドイッチさせて割れにくくしたガラスが一般的です。また、後からガラスの内側に張るフィルムも市販されています。
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ただ、防犯ガラスについて言えば、過信は禁物です。単に割れにくいのであって、強引、かつ、大胆な窃盗団では、やられるケースもあります。防犯の話は別の回でしようと思っていますが、今までには予想もしていなかった対策が求められる、物騒な世の中になっていることは確かです。
3.地震対策 強化ガラス
冒頭でも書きましたが、ガラスが割れて散乱すると危険です。そういう意味から地震対策でも、防犯ガラスは割れにくいという点で有効です。
しかし、最悪割れた場合には、破片の鋭角な部分は凶器と化す可能性があります。学校や大勢の人が集まる施設などで大きな面のガラスを使用する場合や、建物内部の吹き抜け上部で大きなガラスを使う場合などは、強化ガラスの方がよいと思います。
というのは、強化ガラスは、同じ厚みのフロートガラスの3倍程度強度があり、割れたときの破片は丸い粒状になって飛散するからです。
4.防火ガラス
建築基準法では、延焼の恐れのある範囲の開口部は、防火上の対策を施さなければならないとされています。
一般住宅の場合、一般の窓は防火雨戸などで対応できますが、小窓などの場合は、ガラス自身に金属製の網を入れた、いわゆる網入りガラスが多く採用されています。
この網入りガラスは、福岡の例のように、万一破損した際にも破片が飛び散りにくいこともありますが、注意してほしいこととしては、
・網入り板ガラスは、多少の効果はあるものの、防犯ガラスの代用にはならないこと
・鉄製の網は切断面からはさびるので、サッシ枠にのみ込まれているガラス周囲部分への雨水や結露水等の浸入でさびることがあること
・ガラスの端部の強度は、フロート板ガラスと比べて低く、「熱割れ」という現象を起こしやすいため、日射など熱の影響を受けやすい角度の使用などでは注意が必要
などの点で、網入りガラスを過信しないようにしてください。
また、網入りガラスの網ですが、現在は図5の左側のように菱形ですが、過去には右側のような縦線だけのガラスが使われていた時代があります。
変更された原因が防火性能ですから、もし、現在もこのガラスが使用されていて、しかも隣家と接近している場合は、取り換えることを検討された方がよいと思います。
[2006/2/2]
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